世の中を何にたとへむ朝ぼらけ
漕ぎゆく舟の跡の白波
- 歌の意味
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この世を何にたとえようか。夜明け方に漕いでゆく舟の跡に立つ白波、すぐに消えてしまうその白波のようなものだ。
- 鑑賞
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巻第二十 哀傷 1327
詞書「題しらず」
この世を何にたとえようか、夜明けに漕いでゆく舟の跡の白波のようなものだと詠む歌である。ほのぼのと明けてゆく海に、漕ぎ去る舟の跡の白波が立っては消えてゆく情景に、跡形もなく過ぎ去ってゆく世のはかなさを重ねている。無常を詠んだ歌として古くから名高く、後世にも広く愛誦された。
作者の沙弥満誓は、俗名を笠麻呂といい、出家して筑紫の観世音寺の造営にあたった。大宰府で大伴旅人らと歌を交わした。
万葉集の巻三に、下の句を「漕ぎ去にし船の跡なきごとし」とする類歌が見える。
初句「世の中を」は、この世を、の意である。
二句「何にたとへむ」は、何にたとえようか、の意で、ここで句切れとなる二句切れの歌で、自ら問いを立てて下の句で答えている。本巻の第千二百八十六首の結句「何にたとへん」と、同じ問いを共有している。
三句「朝ぼらけ」は、夜がほのぼのと明けるころ、の意である。
四句「漕ぎゆく舟の」は、漕いで去ってゆく舟の、の意である。
結句「跡の白波」は、舟の通った跡に立つ白波、の意で、体言止めである。立ってはすぐに消える白波に、世のはかなさをたとえている。
あさぼらけ:朝ぼらけ。夜がほのぼのと明けるころ
しやみ:沙弥。出家して間もない僧
- 作者
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沙弥満誓
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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草枕人は誰とか言ひ置きし つひの住処は野山とぞ見る
- 次の歌
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契りあれば屍なれども逢ひぬるを 我をば誰か訪はんとすらん