古典和歌stream

花の春重なるかひぞなかりける
散らぬ日数の添はばこそあらめ

歌の意味
花の咲く春が閏月で重なっても、その甲斐はなかった。花の散らない日数が加わるのであればよいのだが。
鑑賞
巻第二 春歌下 132

詞書「閏三月尽によみ侍りける」
 閏三月の末日に詠んだ歌である。閏月があって三月が二度重なり、花の春が長くなったけれども、何の甲斐もなかった、花の散らない日数が増えるのならばよかったのだが、と詠む。暦の上で春が延びても花は待ってくれないという嘆きで、春が長くなることへの期待と、花の散った後の春が長いだけの空しさとを表している。
 作者の「権大僧都範玄」は藤原為業の子で、興福寺の僧となり、権大僧都を経て興福寺別当、権僧正に至った。

 初句「花の春」は、花の咲く春、の意である。
 二句「重なるかひぞ」の「重なる」は、閏月によって三月が重なることをいい、「かひ」は甲斐、効果のことである。「ぞ」は係助詞で、三句の「ける」と係り結びをなす。
 三句「なかりける」は、甲斐がなかったことだ、の意で、「ぞ」の結びとなる。ここで句切れとなる。
 四句「散らぬ日数の」は、花の散らない日数の、の意である。本巻巻頭の第七十七首「花も日数も積もりぬる」が、花を見て過ごした日数を詠んだのと呼応し、巻末近くで、散らぬ日数を願う歌が置かれている。
 結句「添はばこそあらめ」の「こそ」は係助詞で、「め」と已然形で結ぶ。加わるのであればよいのだが、の意で、実際にはそうでないことを嘆く。

うるふ:暦と季節のずれを調整するために加える月
かひ:甲斐、効果
作者
範玄
出典
千載和歌集
前の歌
花はみな四方の嵐に誘はれて ひとりや春の今日は行くらん
次の歌
惜しめどもかひもなぎさに春暮れて 浪とともにぞたちわかれぬる