惜しめどもかひもなぎさに春暮れて
浪とともにぞたちわかれぬる
- 歌の意味
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いくら惜しんでもその甲斐もなく、渚で春は暮れて、寄せては返す波とともに、春と立ち別れてしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第二 春歌下 133
詞書「海路三月尽といへる心をよめる」
「海路三月尽(海路の三月尽)」という題で詠んだ歌である。どれほど惜しんでもその甲斐もなく、渚で春が暮れてしまい、立っては引いてゆく波とともに、春と立ち別れてしまった、と詠む。「甲斐」と「貝」、「無き」と「渚」、波が「立つ」と「立ち別れ」など、海辺の縁語と掛詞を重ね、海路の旅の途上で迎える春の終わりを描いている。
作者の「前大僧正覚忠」は関白藤原忠通の子で、天台宗の僧となり、天台座主、大僧正に至った。
初句「惜しめども」の「ども」は逆接の接続助詞で、惜しむけれども、の意である。
二句「かひもなぎさに」の「かひ」は「甲斐」と「貝」の掛詞、「なぎさ」は「無き」と「渚」の掛詞である。惜しむ甲斐もなく、の意に、貝のある渚の景を重ねる。
三句「春暮れて」は、春が暮れて、の意で、三月尽の日の暮れと春の終わりとを重ねる。
四句「浪とともにぞ」の「ぞ」は係助詞で、結句の「ぬる」と係り結びをなす。「浪」は「貝」「渚」と縁語の関係にある。
結句「たちわかれぬる」の「たち」は、波が「立つ」意と「立ち別れ」とを掛ける。「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形で、「ぞ」の結びとなる。前の第百三十首が陸路の旅で春に別れたのに対し、本歌は海路の旅で春に別れる。
かひ:「甲斐」と「貝」を掛ける
なぎさ:「無き」と「渚」を掛ける
たつ:波が「立つ」意と、「立ち別れる」意を掛ける
- 作者
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覚忠
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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花の春重なるかひぞなかりける 散らぬ日数の添はばこそあらめ
- 次の歌
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常よりも今日の暮るるを惜しむかな 今いくたびの春と知らねば