旅衣朝たつ小野の露しげみ
しぼりもあへずしのぶもぢずり
- 歌の意味
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旅衣を着て朝早く野を発つと、露がしげく置いているので、濡れた袖を絞りきることもできない。忍ぶ思いに乱れる信夫もじずりの衣は。
- 鑑賞
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巻第八 羈旅歌 524
詞書「客衣露重といへる心をよめる」
旅の衣に露が重いという題で詠んだ歌である。旅衣を着て朝早く野を発つと、露がしげく置いているので、袖を絞りきることもできない、忍ぶ思いに乱れる信夫もじずりの衣は、と詠む。露に濡れた旅衣を、乱れ模様の信夫もじずりに重ね、旅の涙と忍ぶ思いとを表している。
作者の「前大僧正覚忠」は関白藤原忠通の子である。園城寺の僧で、天台座主、大僧正に至った。
古今和歌集の河原左大臣源融の歌に、陸奥のしのぶもぢずりのように誰のために心が乱れはじめたのかと詠むものがあり、小倉百人一首にも採られている。本歌の「しのぶもぢずり」はこれを踏まえる。
初句「旅衣」は旅に着る衣で、二句の「たつ」と縁語となる。
二句「朝たつ小野の」の「たつ」に、出発する意の「立つ」と、衣を「裁つ」とを掛け、初句の旅衣の縁語とする。「小野」は野の意である。
三句「露しげみ」の「み」は原因理由を表す接尾語で、露がしげく置くので、の意である。
四句「しぼりもあへず」の「あへず」は、しきれない、の意で、袖を絞りきることもできない、の意である。ここで句切れとなる。
結句「しのぶもぢずり」は陸奥国信夫の地で産した乱れ模様の摺り衣で、「しのぶ」に地名と忍ぶ意とを掛ける。体言止めとし、源融の歌を踏まえる。
たつ:出発する意と、衣を裁つ意を掛ける
をの:野
しぼる:濡れた袖を絞る
しのぶもぢずり:陸奥国信夫で産した乱れ模様の摺り衣で、「しのぶ」に地名と忍ぶ意を掛ける
- 作者
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覚忠
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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越えて行く友やなからむ逢坂の 関の清水のかげ離れなば
- 次の歌
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風の音にわきぞかねまし松が根の 枕に漏らぬ時雨なりせば