憂き世をば捨てて入りにし山なれど
君が問ふにや出でんとすらん
- 歌の意味
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憂き世を捨てて入った山ではあるけれども、あなたが便りをくださったので、この山を出ようとすることになるのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十七 雑歌中 1133
詞書「返し」
前歌の第千百三十二首に対する覚忠の返歌である。憂き世を捨てて入った山であるが、あなたが便りをくださったので出ようとするのだろうか、と詠む。俗世を捨てて修行のために入った山であるから、本来ならば出ることはないはずである。それでも、あなたがこれほど案じて便りをくれたのだから、その心に応えて山を出て都に帰ることになるだろうと、友の情に感謝を込めて答えている。
作者の「前大僧正覚忠」は関白藤原忠通の子である。園城寺の僧で、天台座主をつとめ、大僧正に至った。
前歌の第千百三十二首への返歌で、前歌の「都に帰り来るまで」を「出でんとすらん」と受け、「君が」を共有して応じている。
初句「憂き世をば」は、つらいこの世を、の意である。
二句「捨てて入りにし」の「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形、「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、捨てて入ってしまった、の意である。
三句「山なれど」は、山であるけれども、の意で、逆接で下に続く。
四句「君が問ふにや」の「問ふ」は便りをして見舞う意で、「や」は疑問の係助詞で、結句の「らん」で結ぶ。前歌の第千百三十二首の四句「君が都に」と「君が」を共有する。
結句「出でんとすらん」は、山を出ようとするのだろうか、の意で、前歌の結句「帰り来るまで」に応じている。
とふ:見舞う、便りをする
- 作者
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覚忠
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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惜しからぬ命ぞさらに惜しまるる 君が都に帰り来るまで
- 次の歌
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岩そそく水よりほかに音せねば 心ひとつを澄ましてぞ聞く