見るままに涙ぞ落つる限りなき
命に代はる姿と思へば
- 歌の意味
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拝見するやいなや、涙がこぼれ落ちる。この上なく大切な人の命に代わってくださったお姿だと思うと。
- 鑑賞
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巻第十九 釈教歌 1212
詞書「あなうの観音を見奉りて」
あなうの観音を拝んで詠んだ歌である。見るとすぐに涙が落ちる、限りない命に代わる姿だと思うと、と詠む。あなうは丹波国の穴太と解され、その寺の観音は、信心深い人の身代わりとなって矢を受けたという身代わり観音の伝えで知られる。その像を拝み、人の命に代わってくださった慈悲の深さに涙している。
作者の「前大僧正覚忠」は関白藤原忠通の子で、天台宗の僧として大僧正に至った。三十三所観音の巡礼を行ったことでも知られる。
前歌の第千二百十一首に続き、観音巡礼の途上で詠んだ歌である。
初句「見るままに」は、見るとすぐに、見るにつれて、の意である。
二句「涙ぞ落つる」の「ぞ」は強意の係助詞で、連体形の「落つる」で結ぶ。ここで句切れとなる。
三句「限りなき」は、この上ない、の意で、四句の「命」にかかる。
四句「命に代はる」は、人の命の身代わりとなる、の意で、身代わり観音の伝えをふまえている。
結句「姿と思へば」の「姿」は観音の像で、「ば」は確定条件を表す。倒置によって二句の涙のわけを示している。
あなう:丹波国の穴太と解される、身代わり観音の伝えで知られる寺がある
みがはり:他人に代わって災いを受けること
- 作者
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覚忠
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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世を照らす仏のしるしありければ まだ灯火も消えぬなりけり
- 次の歌
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千歳まで結びし水も露ばかり わが身のためと思ひやはせし