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物ごとに秋の気色はしるけれど
まづ身にしむは荻の上風

歌の意味
何ごとにも秋の気配ははっきりと表れているけれども、まず身にしみて感じられるのは、荻の葉の上を吹く風である。
鑑賞
巻第四 秋歌上 233

詞書「郁芳門院の前栽合に荻をよめる」
 白河天皇の皇女郁芳門院媞子内親王のもとで催された前栽合で、「荻」を題として詠んだ歌である。目に映るものすべてに秋の気配ははっきりと表れているけれども、何よりも先に身にしみて感じられるのは、荻の葉の上を吹く風である、と詠む。数ある秋のしるしの中から荻の上風を第一に挙げ、秋の訪れを最も鋭く告げるものとしてとらえている。
 作者の「大蔵卿行宗」は源行宗である。参議源基平の子で、大蔵卿に至った。
 前栽合は、庭の植え込みの草花を持ち寄り、歌を添えて優劣を競う催しである。

 初句「物ごとに」は、何ごとにも、目に映るものすべてに、の意である。
 二句「秋の気色は」の「気色」は、様子、気配の意である。本巻の第二百二十八首「けしきの森」に続き、秋の「けしき」を詠む。
 三句「しるけれど」の「しるし」ははっきりしている意で、「ど」は逆接である。
 四句「まづ身にしむは」の「まづ」は、何よりも先に、の意である。前歌の第二百三十二首「音ぞ身にしむ」を受け、「身にしむ」を詠む。
 結句「荻の上風」は体言止めで、荻の葉の上を吹き渡る風をいう。本巻の第二百九十首も同じ「荻の上風」を結句に置き、月の夜の荻の風を詠む。巻頭の第二百二十六首「荻の葉風」とも響き合う。

うはかぜ:草木の葉の上を吹き渡る風
せんざい:庭の植え込み、またそこに植えた草花
作者
源行宗
出典
千載和歌集
前の歌
神山の松吹く風も今日よりは 色は変はらで音ぞ身にしむ
次の歌
秋風や涙もよほすつまならむ おとづれしより袖の乾かぬ