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いづくにか月は光をとどむらん
宿りし水も氷ゐにけり

歌の意味
いったいどこに月は光をとどめているのだろうか。月の光が宿っていた水も、凍りついてしまった。
鑑賞
巻第六 冬歌 439

詞書「氷の歌とてよめる」
 氷の歌として詠んだものである。いったいどこに月は光をとどめているのだろうか、月の光が宿っていた水も凍りついてしまった、と詠む。水面が氷に閉ざされて月の映る所がなくなったことを、月が宿る場所を失ったものとして、月の身になって案じている。
 作者の「左大弁親宗」は平親宗である。平時信の子で、後白河院の女御建春門院滋子の弟にあたる。のちに中納言に至った。
 第四百三十九首から第四百四十一首までの三首は、同じ詞書のもとに置かれた氷の歌である。前歌の第四百三十八首が氷の下にまで宿る月を詠んだのに対し、本歌は氷のために宿る所を失った月を詠み、反転した構図をなしている。

 初句「いづくにか」の「いづく」は、どこ、の意である。「か」は疑問の係助詞で、二句の「らん」と連体形で結ぶ。
 二句「月は光を」は、月がその光を、の意である。
 三句「とどむらん」の「とどむ」はとどめる、留め置く意で、「らん」は現在推量の助動詞である。ここで句切れとなる。
 四句「宿りし水も」の「宿る」は月の光が水に映る意で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。前歌の第四百三十八首の「宿る月」を受ける。
 結句「氷ゐにけり」の「氷ゐる」は氷が張る意で、「けり」は詠嘆の助動詞である。本巻の第四百三十四首の「つららゐにけり」と同じ言い回しである。

いづく:どこ
とどむ:とどめる、留め置く
やどる:月の光が水などに映る
こほりゐる:氷が張る
作者
平親宗
出典
千載和歌集
前の歌
夜を重ね結ぶ氷の下にさへ 心深くも宿る月かな
次の歌
冬来れば行く手に人は汲まねども 氷ぞむすぶ山の井の水