- 歌の意味
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忘れないでくれ。旅先で姨捨山の名高い月を見ることがあっても、都を出発するこの有明の空を。
- 鑑賞
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巻第七 離別歌 496
詞書「人に餞し侍りける暁よめる」
旅立つ人のために餞別の宴を催した、その明け方に詠んだ歌である。旅先で姨捨山の名高い月を見ることがあっても、都を出発するこの有明の空を忘れないでくれ、と詠む。信濃の月の名所である姨捨山を挙げ、旅先の美しい月にも心を奪われず、別れの朝の有明の月を思い出してほしいと願っている。
作者の「右衛門督頼実」は藤原頼実である。左大臣藤原経宗の子で、のちに太政大臣に至った。
姨捨山の月は、古今和歌集のよみ人しらずの歌に、更級の姨捨山に照る月を見て心を慰めかねたと詠まれて以来、慰めがたい月として知られる。本歌はその名所の月を引き合いに出している。
初句「忘るなよ」の「な」は禁止の終助詞、「よ」は呼びかけの終助詞で、ここで句切れとなる。本巻の第四百八十一首と同じ初句で、第四百八十一首が雪の日数を詠むのに対し、本歌は月を詠む。
二句「姨捨山の」の「姨捨山」は、信濃国更級にある月の名所の歌枕である。古今和歌集の歌を踏まえる。
三句「月見ても」の「ても」は逆接の仮定条件で、月を見たとしても、の意である。
四句「都を出づる」は、都を出発する、の意で、旅立ちの朝をいう。
結句「有明の空」は、夜が明けても月が残る空で、詞書の暁に当たる。体言止めとし、初句の「忘るなよ」の対象を最後に示す倒置となっている。
をばすてやま:信濃国更級の山で、月の名所として知られる歌枕
ありあけ:夜が明けても空に月が残っているころ
- 作者
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藤原頼実
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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あらずのみなりゆく旅の別れ路に 手馴れし琴の音こそ変はらね
- 次の歌
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別れても心隔つな旅衣 幾重重なる山路なりとも