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別れても心隔つな旅衣
幾重重なる山路なりとも

歌の意味
別れても心を隔てないでくれ。旅衣を重ねるように、幾重にも重なる山路を越えてゆくとしても。
鑑賞
巻第七 離別歌 497

詞書「百首歌よみ侍りける時、別れの心をよめる」
 百首歌を詠んだ折に、別れの題で詠んだ歌である。旅衣を重ねるように幾重にも重なる山路を越えてゆくとしても、別れても心を隔てないでくれ、と詠む。旅衣の縁で「重なる」を導き、山々が隔てる距離の遠さと、それでも通い合っていたい心とを対比している。離別歌の巻末を飾る一首である。
 作者の「藤原定家」は本集の撰者藤原俊成の子である。のちに新古今和歌集、新勅撰和歌集の撰者となり、小倉百人一首を選んだとされる。
 本歌は離別歌の巻末である。巻頭の第四百七十六首は「心ばかりを」しるべとして旅立つ人を送ると詠み、巻末の本歌は「心隔つな」と願って巻を閉じる。離れても通う心を詠む歌で、巻の初めと終わりが呼応している。

 初句「別れても」は、別れても、の意である。本巻の第四百九十首も同じ「別れても」で始まる。
 二句「心隔つな」の「な」は禁止の終助詞で、心を隔てるな、の意である。ここで句切れとなる。巻頭の第四百七十六首の「心ばかりを」と、「心」の語で呼応する。
 三句「旅衣」は旅に着る衣で、衣を重ねることから四句の「重なる」を導く。
 四句「幾重重なる」は、幾重にも重なる、の意で、旅衣の縁語である。重なり合う山々が二人を隔てることをいう。
 結句「山路なりとも」の「とも」は逆接の仮定条件で、山路であっても、の意である。二句の「心隔つな」に返る倒置で、巻末を結ぶ。

たびごろも:旅に着る衣
へだつ:隔てる、間を遠ざける
作者
藤原定家
出典
千載和歌集
前の歌
忘るなよ姨捨山の月見ても 都を出づる有明の空
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有明の月も清水に宿りけり 今宵は越えじ逢坂の関