- 歌の意味
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有明の月も逢坂の関の清水に宿を取ったことだ。今夜は逢坂の関を越えずにおこう。
- 鑑賞
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巻第八 羈旅歌 498
詞書「題しらず」
有明の月も逢坂の関の清水に宿を取っている、今夜は関を越えずにおこう、と詠む。夜明け近くまで残る月が関の清水に映っているさまを、月が宿を取ったと見立て、その美しさに心ひかれて自分も旅立ちを延ばそうとする旅人の風雅な心を表している。羈旅歌の巻頭を飾る一首である。
作者の「藤原範永朝臣」は尾張守藤原中清の子である。受領として諸国の守を歴任し、和歌六人党の一人として知られる。晩年に出家し、津入道と呼ばれた。
本歌は羈旅歌の巻頭である。巻末の第五百四十四首は、峰で雲に宿を借りる旅寝を詠んで巻を閉じる。巻頭で月が清水に宿り、巻末で旅人が雲に宿を借りるという「宿」の趣向が呼応している。
初句「有明の」は、夜が明けても空に月が残っているころをいう。本巻の第五百一首、第五百三十五首にも有明の月が詠まれる。
二句「月も清水に」の「清水」は逢坂の関にあった関の清水で、湧き水の名所である。「も」は、私と同じように月も、の意を含む。
三句「宿りけり」の「けり」は気づきの詠嘆の助動詞で、月が清水に映るさまを宿ったと見立てる。ここで句切れとなる。
四句「今宵は越えじ」の「じ」は打消し意志の助動詞で、今夜は越えずにおこう、の意である。
結句「逢坂の関」は山城と近江の境にあった関で、東国への旅の入り口にあたる歌枕である。体言止めとし、越えずにおく関を最後に示す。本巻の第五百二十二首、第五百二十三首も逢坂の関を詠む。
ありあけ:夜が明けても空に月が残っているころ
しみづ:湧き出る清らかな水で、ここでは逢坂の関の清水
やどる:宿を取る、水などに影が映る
あふさかのせき:山城と近江の境にあった関所で、歌枕
- 作者
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藤原範永
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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別れても心隔つな旅衣 幾重重なる山路なりとも
- 次の歌
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播磨路や須磨の関屋の板廂 月漏れとてやまばらなるらん