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千早ぶる斎の宮の有栖川
松とともにぞ影はすむべき

歌の意味
斎院の御所を流れる有栖川は、松とともに、その水に映る影をいつまでも澄ませ、斎院もまた永く住み続けるにちがいない。
鑑賞
巻第十 賀歌 616

詞書「二条太皇太后宮、賀茂の斎と申しける時、本院にて松枝映水といへる心を詠み侍りける」
 二条太皇太后宮令子内親王がまだ賀茂の斎院であった頃、紫野の斎院の本院で「松の枝、水に映る」という題で詠んだ歌である。斎院の御所の有栖川は、松とともに、その影が澄み続けるにちがいない、と詠む。水に映る松の枝の影がいつまでも澄んでいるさまに、斎院が末永くそこに住み続けることを重ね、斎院を祝っている。令子内親王は白河天皇の皇女で、のちに太皇太后となった。
 作者の「京極前太政大臣」は藤原師実である。関白藤原頼通の子で、摂政、関白、太政大臣を歴任し、京極殿と呼ばれた。
 前歌の第六百十五首は、この師実の邸での歌合の歌で、宇治川の波に千代を数えていた。本歌は有栖川の水に映る松の影に長久を見て、川に寄せる祝いの歌が続いている。

 初句「千早ぶる」は「神」や神に関わる語にかかる枕詞で、ここでは「斎の宮」にかかる。本巻の第六百二十一首、第六百三十五首も同じ枕詞で始まる。
 二句「斎の宮の」の「斎の宮」は、賀茂の神に仕える斎院の御所をいう。
 三句「有栖川」は紫野の斎院の本院のあたりを流れた川である。
 四句「松とともにぞ」は、常緑の松と同じく、の意で、題の「松枝」を受ける。「ぞ」は強意の係助詞で、結句の「べき」と連体形で結ぶ。
 結句「影はすむべき」の「すむ」は、水に映る影が澄む意の「澄む」と、斎院が住み続ける意の「住む」を掛ける。「べき」は推量の助動詞「べし」の連体形で、四句の「ぞ」を受けて結ぶ。

すむ:影が澄む意と、斎院が住む意を掛ける
いつき:神に仕える未婚の皇女。ここでは賀茂の斎院
ほんゐん:紫野にあった賀茂の斎院の御所
作者
藤原師実
出典
千載和歌集
前の歌
落ちたぎつ八十宇治川の早き瀬に 岩越す波は千代の数かも
次の歌
行く末をまつぞ久しき君が経ん 千代の始めの子の日と思へば