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わりなしや思ふ心の色ならば
これぞそれとも言はましものを

歌の意味
どうにもならないことだ。思う心に色があるならば、これこそがその思いだとも言えるだろうに。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 643

詞書は前の歌に続き「堀河院御時、百首歌奉りける時、初めの恋の心を詠める」
 前の二首と同じく堀河百首で「初めの恋」の題により詠んだ歌である。どうにもならないことだ、思う心が色であるならば、これがそれだとも言えるのに、と詠む。目に見えない恋心を相手に示すすべがないもどかしさを、心に色があればと仮定して表している。
 作者の「河内」は前斎宮に仕えた女房である。堀河百首の作者の一人で、経歴の詳細は多く伝わらない。
 一連の三首目である。「色」に寄せて恋心を詠む発想は、本巻の第六百四十六首の「色に出でじ」、第六百八十八首の「色見えぬ心のほど」などにも見られる。

 初句「わりなしや」の「わりなし」は道理に合わない、どうしようもない意で、「や」は詠嘆である。ここで句切れとなる。
 二句「思ふ心の」は、恋い慕う自分の心が、の意である。
 三句「色ならば」は、色であるならば、の意で、目に見えない心を色にたとえて仮定する。第六百八十八首の初句「色見えぬ」と対照をなす。
 四句「これぞそれとも」は、これこそがその思いだとも、の意である。
 結句「言はましものを」の「まし」は反実仮想の助動詞で、三句の「ならば」と呼応する。「ものを」は逆接の詠嘆で、言えるだろうに、の意である。

いろ:目に見える形、様子
作者
河内
出典
千載和歌集
前の歌
まだ知らぬ人を初めて恋ふるかな 思ふ心よ道しるべせよ
次の歌
思ふよりいつしか濡るるたもとかな 涙ぞ恋のしるべなりける