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まだ知らぬ人を初めて恋ふるかな
思ふ心よ道しるべせよ

歌の意味
まだ逢ったこともない人を、初めて恋することだ。思う心よ、あの人のもとへの道案内をしてくれ。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 642

詞書は前の歌に続き「堀河院御時、百首歌奉りける時、初めの恋の心を詠める」
 前歌と同じく堀河百首で「初めの恋」の題により詠んだ歌である。まだ知らない人を初めて恋することだ、思う心よ、道しるべをせよ、と詠む。顔も知らず、どこへ向かえばよいかもわからない恋の始まりに、自らの思う心に道案内を頼むという趣向で、恋に踏み出したばかりの心細さを表している。なお本文の四句は「おもふ心よ」とあり、読み仮名の行の「おもぬこころよ」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
 作者の「前太后宮肥後」は藤原定成の娘とされる。二条太皇太后令子内親王に仕えた女房で、堀河百首の作者の一人である。
 一連の二首目である。結句の「道しるべせよ」は本巻の第六百七十八首の結句と同じで、恋路にまどう心が道案内を求める点でも共通する。また第六百四十四首は涙を恋の「しるべ」と詠み、恋の導き手を詠む歌が続く。

 初句「まだ知らぬ」は、まだ逢ったことのない、の意で、二句の「人」にかかる。
 二句「人を初めて」は、その人を初めて、の意で、題の「初めの恋」を受ける。
 三句「恋ふるかな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、恋することだ、の意である。ここで句切れとなる。
 四句「思ふ心よ」は、自分の思う心に呼びかける言い方である。
 結句「道しるべせよ」の「道しるべ」は道案内、「せよ」は「す」の命令形で、道案内をせよ、の意である。第六百七十八首の結句と同じ句である。

みちしるべ:道案内、手引き
作者
肥後
出典
千載和歌集
前の歌
難波江の藻に埋もるる玉柏 あらはれてだに人を恋ひばや
次の歌
わりなしや思ふ心の色ならば これぞそれとも言はましものを