難波江の藻に埋もるる玉柏
あらはれてだに人を恋ひばや
- 歌の意味
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難波江の藻に埋もれている玉柏のように人知れず思うのではなく、せめて表に現れてでも、あの人を恋したいものだ。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 641
詞書「堀河院御時、百首歌奉りける時、初めの恋の心を詠める」
堀河天皇の御代に百首歌を奉った時、「初めの恋」の題で詠んだ歌である。難波江の藻に埋もれている玉柏のように人に知られずに思うのではなく、せめて表に現れてでも人を恋したい、と詠む。上の三句は「あらはれて」を導く序詞で、水底の藻に隠れた玉柏の姿に、まだ打ち明けられずにいる恋の始まりを重ねている。この百首歌は堀河百首である。
作者の「源俊頼朝臣」は大納言源経信の子である。堀河院歌壇の中心として活躍し、白河院の命で金葉和歌集を撰んだ。家集に「散木奇歌集」がある。小倉百人一首にも歌が採られている。
恋歌一の巻頭の一首である。次歌の第六百四十二首、第六百四十三首も同じ堀河百首の「初めの恋」の題による歌で、三首が並んで恋の始まりを詠む。巻末の第七百三首は恋の煙を空にまぎらわせて隠そうと詠み、表に現したい恋で始まった巻が、隠そうとする恋で閉じられている。
初句「難波江の」の「難波江」は摂津国難波の入江で、葦や藻の生い茂る歌枕である。本巻の第六百六十五首の初句「難波女の」と、同じ難波の地を詠む。
二句「藻に埋もるる」の「埋もるる」は動詞「埋もる」の連体形で、藻の中に埋もれている、の意である。人に知られずにいる恋心のたとえとなる。
三句「玉柏」は水中の石とも、海藻ともいわれる語である。上三句が序詞となって四句の「あらはれて」を導く。
四句「あらはれてだに」の「だに」は最小限の希望を表す副助詞で、せめて表に現れてでも、の意である。藻の間から現れる玉柏の姿と、恋心を表に出すことを重ねている。
結句「人を恋ひばや」の「ばや」は自己の希望を表す終助詞で、人を恋したいものだ、の意である。
なにはえ:摂津国難波の入江
たまがしは:水中の石とも、海藻ともいわれる語
うづもる:埋もれる、覆い隠される
- 作者
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源俊頼
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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常盤なる三上の山の杉群や 八百万代のしるしなるらん
- 次の歌
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まだ知らぬ人を初めて恋ふるかな 思ふ心よ道しるべせよ