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常盤なる三上の山の杉群や
八百万代のしるしなるらん

歌の意味
永遠に変わらない常緑の三上の山の杉の群れこそが、八百万代まで続く御代のしるしなのであろう。
鑑賞
巻第十 賀歌 640

詞書「今上御時、元暦元年大嘗会悠紀方風俗歌三神山を詠める」
 本集が撰ばれた時の天皇である後鳥羽天皇の御代、元暦元年(1184)の大嘗会で、悠紀方の風俗歌として近江国の三上山を詠んだ歌である。常盤なる三上の山の杉群こそ、八百万代のしるしであろう、と詠む。永遠に変わらない常緑の杉の群れを、限りなく続く御代の兆しと見て、新帝の御代を祝っている。三上山は近江国の山で、詞書では「三神山」と記され、神の山の意を響かせる。
 作者の「藤原季経朝臣」は左京大夫藤原顕輔の子である。六条藤家の歌人で、兄清輔とともに家の歌学を伝え、のちに宮内卿に至った。
 賀歌の巻末の一首である。巻頭の第六百六首が竹を詠んで「幾千代と限らざりける」と始まったのに対し、巻末の本歌は常緑の杉を「八百万代のしるし」と詠み、巻頭と巻末が常緑の木に寄せた御代の長久で呼応している。また今上の後鳥羽天皇の大嘗会の歌で巻を閉じ、当代の御代の長久を祈る構成となっている。

 初句「常盤なる」の「常盤」は永久に変わらないことで、常緑の杉をいう。本巻の第六百二十六首の結句「常盤なるべし」と共通する。
 二句「三上の山の」の「三上の山」は近江国の山で、悠紀方の国の地名を詠み込む。
 三句「杉群や」の「杉群」は杉の群れ立つところ、「や」は疑問の係助詞で、結句の「らん」と連体形で結ぶ。前歌の第六百三十九首の結句「関の杉森」と、ともに杉を詠む。
 四句「八百万代の」は、限りなく多い万代の意で、巻頭の第六百六首の「幾千代」を大きく上回る年月を示し、巻を締めくくる。
 結句「しるしなるらん」の「らん」は現在推量の助動詞「らむ」の連体形で、三句の「や」を受けて結ぶ。本巻の第六百十九首の結句と同じ句である。

すぎむら:杉の群れ立つところ
ときは:永久に変わらないこと
ゆき:大嘗会で神饌を奉る第一の国、またその儀
作者
藤原季経
出典
千載和歌集
前の歌
霜降れど栄えこそ増せ君が代に あふさか山の関の杉森
次の歌
難波江の藻に埋もるる玉柏 あらはれてだに人を恋ひばや