ひたすらに恨みしもせじ先の世に
逢ふまでこそは契らざりけめ
- 歌の意味
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ひたすらに恨むことはするまい。前世で、逢うところまでは、二人は契りを結ばなかったのだろうから。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 775
詞書は前の歌に続き「女のもとに遣はしける」
前歌と同じく女のもとに贈った歌である。ひたすら恨むことはするまい、前世で逢うまでは契らなかったのだろう、と詠む。逢えないのは相手の冷たさのためではなく、前世で逢うところまでの縁を結ばなかったためだろうと考え、恨みを抑えて宿縁のつたなさを嘆く歌である。
作者の「左衛門督家通」は藤原家通である。左衛門督を務め、権中納言に至った。
本巻の第七百三十七首も、この世一つの契りではないために思い切れないと詠み、恋を前世からの契りとして捉える。第七百三十七首が前世からの縁ゆえに思い切れないとするのに対し、本歌は前世の縁が浅いゆえに逢えないとしており、前世の契りをめぐって逆の方向から詠んでいる。
初句「ひたすらに」は、いちずに、ひたすら、の意である。
二句「恨みしもせじ」の「しも」は強意、「じ」は打消し意志の助動詞で、恨むことはするまい、の意である。ここで句切れとなる。
三句「先の世に」の「先の世」は前世の意である。本巻の第七百三十七首の四句「この世一つの」と対をなす。
四句「逢ふまでこそは」の「こそ」は強意の係助詞で、結句の「けめ」と係り結びをなす。逢うところまでは、の意である。
結句「契らざりけめ」の「ざり」は打消しの助動詞「ず」、「けめ」は過去推量の助動詞「けむ」の已然形で、四句の「こそ」の結びである。契りを結ばなかったのだろう、の意である。
さきのよ:前世
ちぎる:縁を結ぶ。約束する
- 作者
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藤原家通
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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恋ひ死なば我ゆゑとだに思ひ出でよ さこそはつらき心なりとも
- 次の歌
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真澄鏡心も映るものならば さりとも今はあはれとや見ん