住み馴れし佐野の中川瀬絶えして
流れ変はるは涙なりけり
- 歌の意味
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住み馴れた佐野の中川の瀬が絶えて流れが変わってしまったように、二人の逢う瀬が絶えて、代わりに流れるのは私の涙であったのだ。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 890
詞書「摂政、右大臣の時、家に百首歌詠ませ侍りける時、逢不逢恋を詠める」
摂政藤原兼実が右大臣であった時、その家で人々に百首歌を詠ませた折に、「逢うて逢はざる恋」の題で詠んだ歌である。住み馴れた佐野の中川の瀬が絶えて、流れが変わるのは涙であった、と詠む。通い馴れた所の川の瀬が絶えて流れが変わるように、二人の逢う瀬が絶えてしまい、今流れるのは自分の涙ばかりであると、一度は逢った恋が絶えた嘆きを表している。
作者の「源仲綱」は源頼政の子である。伊豆守などを務め、父とともに以仁王の挙兵に加わって、宇治の戦いで討死した。詞書の「摂政」は九条兼実である。
前歌の第八百八十九首と同じく「中川」を詠み、前歌が流れの絶えない中川で絶えない仲を詠むのに対し、本歌は瀬の絶えた中川で絶えた仲を詠んでいる。結句「涙なりけり」は本巻の第八百四十九首、第八百六十八首、第八百七十二首と共通する。本巻の第八百五十首、第八百九十四首と同じ「逢不逢恋」の題の歌である。
初句「住み馴れし」は住み馴れた、通い馴れた、の意で、かつて恋しい人のもとへ通い馴れていたことを示す。
二句「佐野の中川」は佐野にある中川という川である。前歌の第八百八十九首の三句「中川に」と同じく中川を詠む。
三句「瀬絶えして」は川の瀬が絶えて、の意で、逢う瀬が絶えた意を重ねる。題の「逢はざる」に当たる。
四句「流れ変はるは」は川の流れが変わることで、流れるものが涙に変わった意を重ねる。前歌の第八百八十九首の二句「流れは絶えぬ」と対照をなす。
結句「涙なりけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、それは涙であったのだ、の意である。本巻の第八百四十九首、第八百六十八首、第八百七十二首と同じ結句である。
せ:川の浅瀬。逢う機会の「逢ふ瀬」の意を重ねる
- 作者
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源仲綱
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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いかなれば流れは絶えぬ中川に 逢ふ瀬の数の少なかるらん
- 次の歌
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今さらに恋しといふも頼まれず これも心の変はると思へば