玉藻葺く磯屋が下に漏る時雨
旅寝の袖もしほたれよとや
- 歌の意味
-
美しい藻で屋根を葺いた磯辺の小屋の下に漏れ落ちてくる時雨は、旅寝の私の袖までも、潮に濡れたようにしずくを垂らせというのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第八 羈旅歌 527
詞書は前の歌に続き「住吉社の歌合とて、人々よみ侍りける時、旅宿時雨といへる心をよみ侍りける」
住吉社歌合で旅宿の時雨の題を詠んだ歌である。美しい藻で屋根を葺いた磯辺の小屋の下に漏れ落ちてくる時雨は、旅寝の私の袖まで、潮に濡れたように濡れよというのだろうか、と詠む。粗末な海辺の小屋に漏れる時雨を、旅人を泣かせようとするものと見て、旅の涙を表している。
作者の「源仲綱」は源頼政の子である。伊豆守などを務め、治承四年(1180)、以仁王の挙兵に父とともに加わり、宇治で自害した。
住吉社歌合の旅宿時雨の題の三首目である。
初句「玉藻葺く」の「玉藻」は藻の美称で、藻で屋根を葺いた、の意である。
二句「磯屋が下に」の「磯屋」は磯辺の小屋で、その屋根の下に、の意である。本巻の第五百十五首の「磯の苫屋」と同じく、海辺の粗末な宿りをいう。
三句「漏る時雨」は屋根から漏れ落ちる時雨で、ここで句切れとなる。本巻の第五百二十五首も、松が根の枕に漏れる時雨を詠む。
四句「旅寝の袖も」の「も」は、小屋だけでなく旅寝の袖までも、の意である。
結句「しほたれよとや」の「しほたる」は潮水に濡れてしずくが垂れる意で、涙に濡れる意を重ねる。「とや」は、と言うのか、の意で、疑問を表す。
たまも:藻の美称
いそや:磯辺の小屋
しほたる:潮水に濡れてしずくが垂れる、涙に濡れる
- 作者
-
源仲綱
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
藻塩草しきつの浦の寝覚めには 時雨にのみや袖は濡れける
- 次の歌
-
草枕同じ旅寝の袖にまた 夜半の時雨も宿は借りけり