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草枕同じ旅寝の袖にまた
夜半の時雨も宿は借りけり

歌の意味
草枕の旅寝をしている同じ袖に、夜半の時雨までもがまた宿を借りたことだ。
鑑賞
巻第八 羈旅歌 528

詞書は前の歌に続き「住吉社の歌合とて、人々よみ侍りける時、旅宿時雨といへる心をよみ侍りける」
 住吉社歌合で旅宿の時雨の題を詠んだ歌である。草枕の旅寝をするこの同じ袖に、夜半の時雨までもがまた宿を借りたことだ、と詠む。すでに涙に濡れている旅寝の袖に、さらに時雨が降りかかったことを、時雨が宿を借りたと見立てている。
 作者の「太皇太后宮小侍従」は石清水八幡宮別当紀光清の娘である。近衛天皇と二条天皇の后となった太皇太后宮藤原多子に仕えた女房で、待宵の小侍従と呼ばれた。
 住吉社歌合の旅宿時雨の題の四首目で、この題の結びである。

 初句「草枕」は旅寝の意で、二句の「旅寝」にかかる。
 二句「同じ旅寝の」の「同じ」は、涙に濡れている同じ、の意で、旅人の涙と時雨とが同じ袖を宿とすることをいう。
 三句「袖にまた」の「また」は、涙に加えてさらに、の意である。本巻の第五百三十八首も同じ「袖にまた」の句をもち、旅寝の袖にさらに時雨が降ると詠む。
 四句「夜半の時雨も」は、夜中に降る時雨も、の意である。
 結句「宿は借りけり」の「けり」は詠嘆の助動詞で、時雨が袖に宿を借りたことだ、の意である。本巻の第五百九首では月が袖の涙に宿り、本歌では時雨が袖に宿を借りる。巻末の第五百四十四首では旅人が雲に宿を借りる。

よは:夜中
くさまくら:草を結んで枕とすること、旅寝
作者
小侍従
出典
千載和歌集
前の歌
玉藻葺く磯屋が下に漏る時雨 旅寝の袖もしほたれよとや
次の歌
はるばると津守の沖を漕ぎ行けば 岸の松風遠ざかるなり