身の憂さを思ひ知らでややみなまし
逢ひ見ぬ先のつらさなりせば
- 歌の意味
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我が身のつたなさを思い知らないままで終わっただろうか。もしこれが、逢う前のつらさであったならば。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 896
詞書「恋歌とて詠み侍りける」
恋の歌として詠んだ歌である。身のつらさを思い知らずに終わっただろうか、逢う前のつらさであったならば、と詠む。逢う前の、ただ相手がつれないだけのつらさであれば、自分の身のつたなさを思い知ることもなかっただろうが、一度逢ったのちに捨てられたからこそ、我が身の不運を痛切に思い知らされたと、逢ったのちの恋の苦しさを表している。
作者の「法印静賢」は少納言藤原通憲の子である。僧となって法印の位に至り、後白河院の近臣としても知られた。
初句「身の憂さを」の「憂さ」はつらさ、不運のことで、我が身のつたない宿命を指す。
二句「思ひ知らでや」の「で」は打消の接続助詞、「や」は疑問の係助詞で、思い知らないで、の意である。三句の「まし」と連体形で結ぶ。
三句「やみなまし」の「やむ」は終わる意、「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形、「まし」は反実仮想の助動詞で、終わってしまっただろうか、の意である。ここで句切れとなり、下の句と倒置の関係にある。
四句「逢ひ見ぬ先の」は逢う前の、契りを結ぶ前の、の意である。
結句「つらさなりせば」の「せば」は反実仮想の仮定で、つらさであったならば、の意である。三句の「まし」と呼応し、実際には逢ったのちのつらさであることを言外に示して結ぶ。
あひみる:男女が契りを結ぶ
やむ:終わりになる
- 作者
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静賢
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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唐衣返してはねし夏の夜は 夢にも飽かで人別れけり
- 次の歌
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逢ふことは身を変へてとも待つべきを 世々を隔てんほどぞ悲しき