思ふをも忘るる人はさもあらばあれ
憂きを偲ばぬ心ともがな
- 歌の意味
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思っている私をさえ忘れてしまう人は、それならそれでかまわない。せめて私の方は、つれない人を恋い慕うことのない心であってほしいものだ。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 933
詞書は前の歌に続き「恋歌とて詠める」
前の二首と同じく恋の歌として詠んだものである。思う私をも忘れる人はそれならそれでよい、つれない人を慕わない心でありたいものだ、と詠む。自分を思ってくれないばかりか忘れてしまう相手のことは、もうどうなってもかまわないと突き放しながら、それでもその人を恋い慕ってしまう自分の心をこそ何とかしたいと願っている。相手を諦めようとしても諦めきれない、恋の未練を詠んだ歌である。
作者の「源有房」は平安時代末期の歌人である。家集に「有房集」がある。
本巻の第九百十八首「憂き人を偲ぶべしとは思ひきや」はつれない人を慕うようになった心を嘆き、本歌はそのような心でなくありたいと願っており、「憂き」と「偲ぶ」の語を共有して反転した構図をなしている。
初句「思ふをも」は、思っている私をも、の意である。
二句「忘るる人は」は、忘れてしまう人は、の意である。本巻の第九百八首の初句「忘るるは」と共通する。
三句「さもあらばあれ」は字余りで、それならそれでかまわない、どうとでもなれ、の意である。ここで句切れとなる。
四句「憂きを偲ばぬ」の「憂き」はつれない人をいい、「偲ぶ」は恋い慕う意で、つれない人を恋い慕わない、の意である。本巻の第九百十八首の初句、二句「憂き人を偲ぶべしとは」と、「憂き」と「偲ぶ」の語を共有する。
結句「心ともがな」の「もがな」は願望の終助詞で、心であってほしいものだ、の意である。
しのぶ:恋い慕う、思い慕う
- 作者
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源有房
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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思ひ知る心のなきを嘆くかな 憂き身ゆゑこそ人もつらけれ
- 次の歌
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はかなくぞ後の世までと契りける まだきにだにも変はる心を