何かそれ思ひ捨つべき梓弓
又引きかへす時もありなん
- 歌の意味
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どうしてそれを思い捨てることがあろうか。梓弓を引き返すように、また官職に返り咲く時もきっとあるだろう。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 975
詞書「返し」
前歌の第九百七十四首に対する返歌である。どうして思い捨てることがあろうか、梓弓を引き返すように、また元に返る時もきっとあるだろう、と詠む。弓を返して泣く伊通に対し、弓を引く動作に再び官に返り咲くことを重ねて、再起の時は必ず来ると励ましている。伊通はのちに実際に官に復帰し、太政大臣にまでのぼった。
作者の「中院右大臣」は源雅定である。村上源氏の源雅実の子で、右大臣にのぼり、中院右大臣と呼ばれた。
前歌の第九百七十四首と贈答をなす一首で、前歌の「梓弓」をそのまま受け、「返る」を「引きかへす」と言い換えて答えている。
初句「何かそれ」の「何か」は反語の係助詞で、二句の「べき」で結ぶ。どうしてそれを、の意である。
二句「思ひ捨つべき」の「べき」は当然の助動詞「べし」の連体形で、思い捨てることがあろうか、いやない、の意である。ここで句切れとなる。
三句「梓弓」は、梓の木で作った弓で、前歌の第九百七十四首の三句「梓弓」を受ける。「引く」を導く働きもしている。
四句「又引きかへす」は、弓を引き戻す意に、再び元の官職に返る意を重ねている。前歌の四句「返るを見るに」を受けて答えている。
結句「時もありなん」の「な」は強意の助動詞「ぬ」の未然形、「ん」は推量の助動詞「む」で、きっと時もあるだろう、の意である。
あづさゆみ:梓の木で作った弓
ひきかへす:弓を引き戻す意に、再び元の地位に戻る意を重ねる
- 作者
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源雅定
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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八年まで手馴らしたりし梓弓 返るを見るにねぞ泣かれける
- 次の歌
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昨日見ししのぶもぢずり誰ならん 心のほどぞ限り知られぬ