増鏡 - 後鳥羽院
水無瀬山の、我が故郷は荒れてしまっているだろう。籬は野原のようになって、人も通わないままに。
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挿頭を折る人でもいてほしい、ことづてを頼もう。隠岐の深山に杉は見えているけれども。
定めがあるので、それでも堪えてきた我が身のつらさよ。民の藁屋と軒を並べて。
増鏡 - 東一条院
思い出すその頃もはかない。私も相手も、かつて見たままの身ではなく、手探りするような世の中で。
消えきらずにいる命がつらい。同じこの世にありながら、頼みをかけることもできない契りなのに。
増鏡 - 小宰相
つらいと思ったあの時の別れは、やがてこの喪服を着ることになる門出だったのだ。
増鏡 - 民部卿の典侍
悲しさはつらいこの世のせいだと思って背を向けてみるけれども、ただ恋しさばかりは慰めようがない。
人の心もすっかり移り変わってしまった花の色につけて、昔のままという長等の山の名までもうとましい。
増鏡 - 藤原家隆
どうしてこれほど思い染めてしまったのだろう。桜花よ、山として高くなり果てるまで。
増鏡 - 藤原秀能
大海原の多くの島々を越えて道案内をしてくれ。遙かに通う沖の釣舟よ。
軒端は荒れて、誰が見るだろうか、水無瀬の宿の月を。かつて澄み、また住んできたままの色は、さぞ寂しいことだろう。
寂しさというものは、まだ見たことのない島の山里を思いやるだけでも、そこに住む心地がして。
自分でもすっかりいとわしく思い果ててしまったこの身の上に、涙ばかりが昔と変わらぬ顔をしている。
故郷は、潮の入り込んだ磯の草のようなものだ。ただ夕潮が満ちて、見ることの少ないままに。
増鏡 - 菅原為長
昔、名前ばかりを聞いて求めたという三神の山は、これこそがその山である。
増鏡 - 藤原経光
行く末の遠い千代の影こそが長く久しい。まだ二葉であるにすぎない岩崎の松よ。