増鏡 - 土御門院
秋の色を送り迎えて、雲の上で見なれた月も、どうか昔を忘れないでほしい。
詳細を見る
増鏡 - 藤原定家
飽きることのなかった月も、きっとそう思っているのだろう。昔の涙も忘れられないこの世を。
増鏡 - 慈円
東国の方にある勿来の関、その名は、あなたを都に住めということだったのだ。
増鏡 - 源頼朝
都にはあなたに逢うという逢坂の関が近いのだから、来るなという勿来の関は遠いのだと知ってください。
増鏡 - 源実朝
山は裂け海は干上がるような世であったとしても、君に対して二心をわたしが抱くことがあろうか、決してない。
つらいこの世には、こうあれというので生まれてきたのだろう。その道理を知らずに流れる私の涙よ。
増鏡 - 後鳥羽院
私こそがこの島の新しい島守であるぞ。隠岐の海の荒い波風よ、心して吹け。
同じこの世でまた住の江の澄んだ月を見ることがあるだろうか。今日はよそに身を置いて隠岐の島守となっている。
うらやましいことだ。長い日ざしの春に出会って、潮を汲む海人も濡れた袖を干していることだろう。
菖蒲を葺いた茅の軒端に風が吹き過ぎて、乱れがちに落ちてくる村雨の雫よ。
故郷を離れる別れ道に生える葛の葉、その葉が裏返る秋は来るけれども、私が帰る時はない。
母君の、消えきらずに待っている露のような御身を、風が吹くより先に、どうにかして訪ねたいものだ。
八百万の神々もあわれんでほしい。母君が私を待ち得ようとして絶やさずにいる、その命の緒を。
増鏡 - 藤原家隆
寝覚めして、聞き慣れぬものを聞いて心細いのは、荒磯に寄せる浪の暁の声であろう。
浪の絶え間もない隠岐の小島の浜庇、その名のように久しくなってしまった。都を遠く隔てて。
木枯らしが隠岐の杣山を吹きしおり、その枝が荒くしおれるように、私も打ちしおれて物思いに沈む頃である。