増鏡
拙い心が見えてしまうだろうか。この増鏡は、古い鏡の立派な姿には並び立つこともできないで。
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今もまた昔のことを書きとどめるのだから、この増鏡を、古びた代々の書の跡に重ねよう。
増鏡 - 藤原兼光
神代の昔から今日のためだというので、長い穂を垂れるほどに、長田の稲はしなやかに実り始めたのだろうか。
増鏡 - 後鳥羽院
奥山の茨の茂った下までも踏み分けて、どこにも道のある世なのだと人に知らせよう。
見渡すと山の麓が霞んでいる水無瀬川よ。夕暮れの情趣は秋だなどと、どうして思っていたのだろう。
増鏡 - 藤原定家
長く経てきたであろうもとの千年にも古びることなく、我が君が末長い契りを結ばれる峰の若松よ。
我が君の御代に堰き入れて庭を流れてゆく水が、岩を越える数の多さには千代までもの長さが見えることだ。
増鏡 - 後鳥羽院宮内卿
薄くも濃くもある野辺の緑の若草に、雪がまだらに消えていった跡までが見えることだ。
古きものを今に並べてきたことよ。昔の跡をまた尋ね尋ねして。
増鏡 - 藤原良経
敷島の言の葉、その海であって、そこで拾った玉は磨かれたことだ。
増鏡 - 藤原資実
長等の山の峰の松、そこへ吹いてくる風もまた、万代を寿ぐ声である。
増鏡 - 順徳天皇
春日山の、去年の三月の花の香に染めた私の心は、神こそご存じであろう。
明石潟の浦づたいの道が晴れてゆく朝なぎに、霧の中へ漕ぎ入ってゆく海人の釣舟よ。
増鏡 - 藤原秀能
約束しておいた山の木の葉の下紅葉、その色に染めた衣に秋風が吹くことだ。
増鏡 - 慈円
それでもと思う心こそなお深い。絶えることなく絶え絶えに流れてゆく山川の水よ。
君のためを祈る心が深いのならば、頼みに思ってよいだろう。絶えてはまた流れる山川の水のように。