人心憂さこそまされ春立てば
とまらず消ゆるゆき隠れなむ
- 歌の意味
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あの人の心のつらさは増すばかりだ。春になれば止まらずに消えていく雪のように、私もどこかへ行き隠れてしまおう。
- 鑑賞
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巻第一 春歌上 30
詞書「年を経て心かけたる女の、今年ばかりをだに待ち暮らせと言ひけるが、又の年もつれなかりければ」
長年思いを寄せてきた女のつれなさに耐えかね、春になれば消える雪のように、自分もどこかへ消えてしまおうと嘆いた歌である。「ゆき」に雪と行きを掛け、恋の絶望を季節の景物に託している。
詞書によれば、何年も思いを寄せていた女が、せめて今年いっぱいは待って過ごしてほしいと言ったのに、翌年になってもなおつれなかったので詠んだ歌である。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「人心」は、相手の女の心を示す。
二句「憂さこそまされ」の「こそ」は係助詞で、已然形「まされ」と係り結びをなし、つらさが増すばかりだと強調している。ここで句切れとなる。
三句「春立てば」は、春になれば、の意で、雪が消える季節を導いている。
四句「とまらず消ゆる」は、とどまることなく消えていく雪のさまを表す。
結句「ゆき隠れなむ」の「ゆき」は、「雪」と「行き」を掛けた掛詞である。「なむ」は強い意志を表し、雪が消えるように自分も行き隠れてしまおうという意である。
ゆき:春に消える「雪」と、立ち去る意の「行き」を掛ける
つれなし:冷淡である、相手の思いに応えない
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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心もて折るかはあやな梅の花 香をとめてだに訪ふ人のなき
- 次の歌
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梅の花香を吹きかくる春風に 心を染めば人やとがめむ