- 歌の意味
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山風が花の香りをさらって運んでくる麓では、春の霞こそが、花の色を閉じ込めてつなぎとめる枷であったのだ。
- 鑑賞
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巻第二 春歌中 73
詞書「寛平御時、花の色霞にこめて見せずといふ心をよみてたてまつれと仰せられければ」
山風が花の香を麓まで運んでくるのに、花の色は霞に閉じ込められて見えないことを、霞を花をつなぎとめる枷に見立てて詠んだ歌である。香は届くのに姿は見えないもどかしさを、機知的に表している。
詞書によれば、宇多天皇の寛平年間、花の色を霞が閉じ込めて見せないという趣を詠んで献上せよと命じられて詠んだものである。
作者の藤原興風は藤原道成の子で、相模掾などを務めた。管弦にも優れ、三十六歌仙の一人である。
古今和歌集に見える良岑宗貞の「花の色は霞にこめて見せずとも香をだに盗め春の山風」と、題の言葉や山風が香を運ぶ趣向を同じくしている。
初句「山風の」は、山から吹き下ろす風を示す。
二句「花の香かどふ」の「かどふ」は、かどわかす、さらう意で、山風が花の香をさらって麓へ運ぶことを表す。
三句「麓には」は、花の咲く山の麓、すなわち香だけが届く所を示す。
四句「春の霞ぞ」の「ぞ」は係助詞で、結句の連体形「ける」と係り結びをなす。本巻の第六十三首にも、霞と花の色を取り合わせた歌がある。
結句「ほだしなりける」の「ほだし」は馬の足をつなぐ綱、転じて自由を妨げるものの意で、霞が花を閉じ込める枷であったと気づいた詠嘆を表す。
かどふ:かどわかす、さらう
ほだし:馬の足をつなぐ綱、転じて自由を妨げるもの
- 作者
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藤原興風
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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春の池の玉藻に遊ぶにほ鳥の 足のいとなき恋もするかな
- 次の歌
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春雨の世にふりにたる心にも なほ新しく花をこそ思へ