春雨の世にふりにたる心にも
なほ新しく花をこそ思へ
- 歌の意味
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春雨が降るように、長く世を経て古びてしまった心にも、花のことだけはやはり新鮮に思われることだ。
- 鑑賞
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巻第二 春歌中 74
詞書「題しらず」
春雨が降るように長く世を経て古びてしまった心にも、花だけはなお新鮮に思われると詠んだ歌である。年老いても変わらず花を愛する心を、春雨の「降る」と年を経る「古る」を重ねて表している。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。
初句「春雨の」は、次の「ふり」を導いている。巻末の第八十首にも、同じく「ふり」と「春雨」を取り合わせた歌が置かれている。
二句「世にふりにたる」の「ふり」は、雨が「降り」る意と、年を経て「古り」る意を掛けた掛詞である。「にたる」は完了で、すっかり古びてしまった、の意を表す。
三句「心にも」は、古びた心であっても、の意である。本巻の第四十七首が花を見て老いを嘆いたのに対し、本歌は老いた心にも花は新しいと詠んでいる。
四句「なほ新しく」は、やはり新鮮に、の意で、二句の「ふり」と対比されている。
結句「花をこそ思へ」の「こそ」は係助詞で、已然形「思へ」と係り結びをなす。ほかのものはともかく花だけは、と強調している。
ふる:雨が「降る」意と、年を経る意の「古る」を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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山風の花の香かどふ麓には 春の霞ぞほだしなりける
- 次の歌
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春霞立ちて雲居になりゆくは かりの心の変はるなるべし