一年に二度咲かぬ花なれば
むべ散ることを人は言ひけり
- 歌の意味
-
一年に二度とは咲かない花であるから、なるほど、人々は花の散ることをあれこれと言って惜しんだのだ。
- 鑑賞
-
巻第三 春歌下 109
詞書「題しらず」
花は一年に二度とは咲かないものだから、人が散ることをあれほど言い惜しむのももっともだと、改めて納得した歌である。人々が花の散るのを惜しむ理由に思い至った心を、「むべ」の語で表している。
作者の在原元方は在原棟梁の子で、在原業平の孫にあたる。中古三十六歌仙の一人である。
初句「一年に」は、一年のうちに、の意である。本巻の第九十七首も同じ「一年に」で始まり、「二度」の語も共有している。第九十七首が一年に春が二度あればと仮定したのに対し、本歌は花が二度咲かないことを道理として受けとめており、対をなしている。
二句「二度咲かぬ」は、二度とは咲かない、の意である。
三句「花なれば」は、花であるので、の意で、理由を示す。
四句「むべ散ることを」の「むべ」は、なるほど、もっともなことに、の意で、人々の言葉に納得する気持ちを表す。
結句「人は言ひけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、人々が散ることを言い惜しんだ理由に思い至ったことを表している。
ひととせ:一年
- 作者
-
在原元方
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
我が着たる一重衣は山吹の 八重の色にも劣らざりけり
- 次の歌
-
春雨の花の枝より流れ来ば なほこそ濡れめ香もや移ると