春雨の花の枝より流れ来ば
なほこそ濡れめ香もや移ると
- 歌の意味
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春雨が花の枝を伝って流れてくるのなら、なおいっそう濡れていよう。花の香りも身に移るかと思って。
- 鑑賞
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巻第三 春歌下 110
詞書「寛平御時、桜の花の宴ありけるに、雨の降り侍りければ」
花見の宴に降る春雨を嫌わず、花の枝を伝う雨ならば、香りも移るかと思ってなおさら濡れていようと詠んだ歌である。雨をも花の恵みに変える風雅な心を示している。
詞書によれば、宇多天皇の寛平年間に桜の花の宴があった折、雨が降ったので詠んだものである。巻第二の第五十六首が花の雫に我が身を濡らそうと詠んだのと同じ趣向である。
作者の藤原敏行は藤原富士麿の子で、蔵人頭や右兵衛督などを務めた。能書家としても知られ、三十六歌仙の一人である。
初句「春雨の」は、宴に降る春の雨を示す。
二句「花の枝より」は、花の咲く枝を伝って、の意である。
三句「流れ来ば」の「ば」は仮定で、流れてくるのなら、の意である。
四句「なほこそ濡れめ」の「こそ」は係助詞で、已然形「め」と係り結びをなし、なおいっそう濡れていよう、の意を表す。ここで句切れとなる。本巻の第九十八首の「濡れ衣」とも「濡る」の語が通っている。
結句「香もや移ると」の「や」は疑問で、花の香りが身に移るかと、と濡れる理由を後から述べる倒置となっている。
うつる:香りや色が他のものにしみつく
- 作者
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藤原敏行
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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一年に二度咲かぬ花なれば むべ散ることを人は言ひけり
- 次の歌
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春深き色にもあるかな住の江の 底も緑に見ゆる浜松