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我が着たる一重衣は山吹の
八重の色にも劣らざりけり

歌の意味
私が着ている一重の衣は、山吹の八重の花の色にも劣らないことだ。
鑑賞
巻第三 春歌下 108

詞書「前栽に山吹ある所にて」
 自分が着ている一重の衣の色は、庭に咲く八重山吹の色にも劣らないと詠んだ歌である。一重と八重を対比させ、山吹色の衣を花と競わせる趣向に、戯れの心がうかがえる。
 詞書によれば、庭の植え込みに山吹が咲いている所で詠んだものである。
 作者の「かねすけの朝臣」は藤原兼輔である。藤原利基の子で、中納言に至った。賀茂川の堤に邸を構えたことから堤中納言と呼ばれ、紀貫之や凡河内躬恒らを庇護した。紫式部の曽祖父にあたり、三十六歌仙の一人である。

 初句「我が着たる」は、私が着ている、の意である。
 二句「一重衣は」の「一重衣」は裏をつけない一重の衣で、四句の「八重」と対比されている。
 三句「山吹の」は、庭に咲く山吹を示す。本巻の第百四首に続いて山吹が詠まれている。
 四句「八重の色にも」は、花びらの重なった八重山吹の色を示す。一重と八重の数の対比に、花の豊かさに負けない衣の色を言い立てている。
 結句「劣らざりけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、劣らないことよ、の意である。

ひとへごろも:裏をつけない一重の衣
せんざい:庭の植え込み、また植え込みの草木
作者
藤原兼輔
出典
後撰和歌集
前の歌
常よりも春辺になれば桜河 花の浪こそ間なく寄すらめ
次の歌
一年に二度咲かぬ花なれば むべ散ることを人は言ひけり