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常よりも春辺になれば桜河
花の浪こそ間なく寄すらめ

歌の意味
春のころになると、桜河には、いつもよりいっそう、花の波が絶え間なく寄せていることだろう。
鑑賞
巻第三 春歌下 107

詞書「桜河といふ所ありと聞きて」
 桜河という所があると聞き、その名のとおり春になれば花びらの波が絶え間なく寄せているだろうと思いやった歌である。見たことのない土地を、名に込められた「桜」から想像する機知の歌である。
 詞書によれば、桜河という所があると聞いて詠んだものである。常陸国の桜川が、桜の名所の歌枕として知られている。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐守などを務め、土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。

 初句「常よりも」は、いつもよりも、の意である。
 二句「春辺になれば」の「春辺」は春のころの意で、春になると、の意を表す。
 三句「桜河」は地名で、その名の「桜」に花を響かせている。
 四句「花の浪こそ」は、川面を流れる花びらを波に見立てたものである。「こそ」は係助詞で、結句の已然形「らめ」と係り結びをなす。
 結句「間なく寄すらめ」の「らめ」は現在推量で、絶え間なく寄せていることだろう、と遠い地を思いやっている。本巻の第百十一首も住の江の水辺を詠み、水辺の景が配されている。

はるべ:春のころ
よす:波が寄せる
作者
紀貫之
出典
後撰和歌集
前の歌
風にしも何かまかせん桜花 匂ひ飽かぬに散るは憂かりき
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我が着たる一重衣は山吹の 八重の色にも劣らざりけり