春来れば山田の氷うち解けて
人の心にまかすべらなり
- 歌の意味
-
春が来ると山田の氷が解けて、田の水は人の思うままに引き入れられるようになるらしい。
- 鑑賞
-
巻第一 春歌 46
詞書「題しらず」
春になって山田に張っていた氷が解け、田の水は人の思うままに引き入れられるようになると詠む。氷が解けることを、水が人の意のままになる自由の訪れとしてとらえている。
作者の「在原元方」は在原業平の孫で、在原棟梁の子である。
初句「春来れば」は、前歌と同じ初句で、山田の春を詠み継ぐ。
二句「山田の氷」は、前歌の山田を受け、冬の間田を閉ざしていた氷を示す。
三句「うち解けて」は、氷が解ける意で、本巻の第六首の「うちとけぬ」と同じ語を用いる。第六首が鶯の声のまだ解けぬさまを詠むのに対し、本歌は氷の解けたさまを詠む。
四句「人の心に」は、人の思うままに、の意である。
結句「まかすべらなり」は、田に水を「引き入れる」意の「まかす」と、思いどおりに「任す」意を掛けた掛詞である。「べらなり」は推量の助動詞である。
まかす:田に水を引き入れる意と、思いのままに任せる意を掛ける
- 作者
-
在原元方
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
春来ればまづぞうち見る石上 めづらしげなき山田なれども
- 次の歌
-
春の田を人にまかせて我はただ 花に心をつくる頃かな