夢よりもはかなき物は夏の夜の
暁がたの別れなりけり
- 歌の意味
-
夢よりもはかないものは、夏の夜の明け方の別れであったことだ。
- 鑑賞
-
巻第四 夏歌 170
詞書「題しらず」
夢よりもはかないものは、夏の夜の明け方の別れであったと詠んだ歌である。はかないものの代表である夢と比べ、それ以上にはかない短夜の後朝の別れを嘆いている。
作者の壬生忠岑は壬生安綱の子で、古今和歌集の撰者の一人である。官位は低かったが、歌人として名高く、和歌の論書である和歌体十種の作者とも伝えられる。壬生忠見の父で、三十六歌仙の一人である。
初句「夢よりも」は、夢よりも、の意で、はかないものの代表である夢を比較の基準に置いている。次歌の第百七十一首も「夢」をはかないものとして詠んでいる。
二句「はかなき物は」は、はかないものは、の意である。
三句「夏の夜の」は、短い夏の夜の、の意で、前歌の第百六十九首と同じく夏の短夜を詠んでいる。次歌の第百七十一首も三句に「夏の夜の」を置いている。
四句「暁がたの」は、明け方の、の意で、恋人と別れる時刻を示す。本巻の第百九十一首、第百九十七首にも「暁がた」が詠まれている。
結句「別れなりけり」は、別れであったことだ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。
あかつきがた:夜明け前のまだ暗いころ、恋人が別れる時刻
- 作者
-
壬生忠岑
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
夏の夜は逢ふ名のみして敷妙の 塵払ふ間に明けぞしにける
- 次の歌
-
よそながら思ひしよりも夏の夜の 見果てぬ夢ぞはかなかりける