常夏に思ひそめては人知れぬ
心のほどは色に見えなん
- 歌の意味
-
常夏の花のようにいつまでも変わらずに思いはじめ、心を染めたからには、人知れぬ心の深さは、きっと色に表れるだろう。
- 鑑賞
-
巻第四 夏歌 201
詞書「題しらず」
常夏の花のようにいつまでも変わらず思いはじめたからには、人知れぬ心の深さもきっと色に表れるだろうと詠んだ歌である。撫子の花の色に、ひそかに抱いてきた恋心の深さを託して伝えている。
次歌は返歌で、二首は贈答をなしている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。
初句「常夏に」は、撫子の異名である常夏に、いつまでも変わらない意を込めている。前歌の第二百首に続き、常夏を詠んでいる。
二句「思ひそめては」の「そめ」は、思いはじめる意の「初め」と、色に染める意の「染め」を掛けた掛詞で、結句の「色」と縁語になっている。
三句「人知れぬ」は、人に知られない、の意で、本巻の第百九十八首の「人知れず」と同じく、ひそかな思いを表している。
四句「心のほどは」は、心の深さは、の意である。
結句「色に見えなん」は、色に表れるだろう、の意で、「な」は強意、「ん」は推量を表す。次歌の第二百二首は「色と言へば」と、この「色」を受けている。
そむ:思いはじめる意の「初む」と、色に染める意の「染む」を掛ける
とこなつ:撫子の異名
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
常夏の花をだに見ばことなしに 過ぐす月日も短かりなん
- 次の歌
-
色と言へば濃きも薄きも頼まれず 山となでしこ散る世なしやは