わがごとく物や悲しききりぎりす
草の宿りに声絶えず鳴く
- 歌の意味
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私のようにもの悲しいのか、きりぎりすよ。草の宿りで、声も絶えずに鳴いている。
- 鑑賞
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巻第五 秋歌上 258
詞書「題しらず」
私のようにもの悲しいのか、きりぎりすは草の宿りで声も絶えずに鳴いていると詠んだ歌である。絶え間なく鳴く虫の声に、自分と同じ悲しみを見いだし、虫に呼びかけている。
本巻の第二百五十四首から第二百六十一首までは、紀貫之の「題しらず」の歌が八首続き、ひぐらし、きりぎりす、松虫と、秋の虫の声を順に詠んでいる。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐守などを務め、土佐日記の作者としても知られる。三十六歌仙の一人である。
初句「わがごとく」は、私のように、の意で、虫と自身を重ねている。
二句「物や悲しき」の「や」は疑問の係助詞で、連体形「悲しき」と係り結びをなし、もの悲しいのか、の意である。
三句「きりぎりす」は、きりぎりすよ、と呼びかけている。前歌の第二百五十七首と同じく三句に置かれている。
四句「草の宿りに」は、草をすみかとして、の意で、前歌の「草のねごとに」に通じる草むらを示している。
結句「声絶えず鳴く」は、声も絶えずに鳴いている、の意で、前歌の「声乱れけり」に続いて虫の声を詠んでいる。
やどり:仮の住まい、すみか
きりぎりす:今のこおろぎにあたる秋の虫
- 作者
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紀貫之
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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秋風の吹きくる宵はきりぎりす 草のねごとに声乱れけり
- 次の歌
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来むと言ひしほどや過ぎぬる秋の野に 誰松虫ぞ声の悲しき