天の河しがらみかけてとどめなん
飽かず流るる月やよどむと
- 歌の意味
-
天の川にしがらみをかけて、流れをせき止めよう。名残惜しくも流れていく月が、よどんでとどまるかと思って。
- 鑑賞
-
巻第六 秋歌中 329
詞書は前の歌に続き「月を見て」
天の川にしがらみをかけて流れをせき止めよう、名残惜しくも西へ流れていく月がとどまるかと思うからだと詠んだ歌である。空を渡っていく月を天の川に流れるものと見立て、沈みゆく月を惜しむ心を表している。
本巻の第三百二十七首から第三百三十四首までは、詞書「月を見て」のもとに歌が八首並んでいる。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「天の河」は、天の川、の意で、次歌の第三百三十首も三句に「天の河」を置き、天の川を流れる月を詠んでいる。
二句「しがらみかけて」は、しがらみを設けて、の意で、本巻の第三百三首の「雲のしがらみ」と同じく天の川のしがらみを詠んでいる。
三句「とどめなん」の「なん」は、完了の助動詞「ぬ」の未然形「な」に意志の「む」が付いたもので、せき止めてしまおう、の意である。ここで句切れとなる。
四句「飽かず流るる」は、名残惜しくも流れていく、の意である。
結句「月やよどむと」の「や」は疑問の係助詞で、月がよどんでとどまるかと、の意である。三句と倒置の関係にある。
しがらみ:川の流れをせき止めるため、杭を打ち竹や木の枝を絡ませたもの
よどむ:水の流れがとどこおる
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
衣手は寒くもあらねど月影を たまらぬ秋の雪とこそ見れ
- 次の歌
-
秋風に波や立つらん天の河 渡る瀬もなく月の流るる