秋の夜は人をしづめてつれづれと
かきなす琴の音にぞ泣きぬる
- 歌の意味
-
秋の夜は、人を寝静まらせておいて、所在なくかき鳴らす琴の音につられて、声をあげて泣いてしまうことだ。
- 鑑賞
-
巻第六 秋歌中 334
詞書は前の歌に続き「月を見て」
秋の夜には、人々が寝静まったあと、所在なくかき鳴らす琴の音につられて、声をあげて泣いてしまうと詠んだ歌である。静まりかえった秋の夜に響く琴の音に、抑えていた悲しみがあふれ出るさまを表している。
本巻の第三百二十七首から第三百三十四首までは、詞書「月を見て」のもとに歌が八首並んでいる。本歌はその八首目である。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「秋の夜は」は、秋の夜は、の意である。
二句「人をしづめて」は、人を寝静まらせて、の意で、人々の寝入ったあとの静けさを示す。
三句「つれづれと」は、所在なく、もの寂しく、の意である。
四句「かきなす琴の」の「かきなす」は、弦をかき鳴らす、の意である。巻第五の第二百六十五首も、松風の音を琴の調べと聞いている。
結句「音にぞ泣きぬる」の「音に泣く」は声をあげて泣く意で、「音」は琴の音と泣く声を重ねている。係助詞「ぞ」と連体形「ぬる」が係り結びをなしている。
かきなす:弦をかき鳴らす
ねになく:声をあげて泣く
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
吹く風に深きたのみのむなしくは 秋の心を浅しと思はむ
- 次の歌
-
貫きとむる秋しなければ白露の 千草に置ける玉もかひなし