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吹く風に深きたのみのむなしくは
秋の心を浅しと思はむ

歌の意味
吹く風によって、深く頼みにしていた田の実がむなしくなるならば、秋の心を浅いものと思おう。
鑑賞
巻第六 秋歌中 333

詞書は前の歌に続き「月を見て」
 吹く風によって、深く頼みにしていた田の実がむなしくなるのなら、秋の心を浅いものと思おうと詠んだ歌である。「たのみ」に「田の実」と「頼み」を掛け、実りを損なう秋風に、人の心変わりへの恨みを重ねている。
 本巻の第三百二十七首から第三百三十四首までは、詞書「月を見て」のもとに歌が八首並んでいる。巻第五の第二百六十八首も、「たのみ」に同じ掛詞を用い、頼みとした人を失う嘆きを詠んでいる。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「吹く風に」は、吹く風によって、の意である。
 二句「深きたのみの」の「たのみ」は、稲の実である「田の実」と、頼りにする意の「頼み」を掛けた掛詞である。
 三句「むなしくは」の「は」は仮定を表し、むなしくなるならば、の意である。
 四句「秋の心を」は、秋の心を、の意で、「秋」には「飽き」の響きがあり、相手の心変わりを暗示している。
 結句「浅しと思はむ」は、浅いと思おう、の意で、二句の「深き」と対をなしている。

たのみ:稲の実である「田の実」と、頼りにする意の「頼み」を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
消えかへり物思ふ秋の衣こそ 涙の河の紅葉なりけれ
次の歌
秋の夜は人をしづめてつれづれと かきなす琴の音にぞ泣きぬる