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かくばかりあはれならじを時雨るとも
磯の松が根枕ならずは

歌の意味
時雨が降るとしても、これほどしみじみとはしないだろうに。もし磯の松の根を枕にする旅寝でなかったならば。
鑑賞
巻第八 羈旅歌 520

詞書「湖辺時雨といへる心をよめる」
 湖辺の時雨という題で詠んだ歌である。時雨が降るとしても、これほどしみじみとはしないだろうに、もし磯の松の根を枕にする旅寝でなかったならば、と詠む。湖のほとりで松の根を枕に旅寝をしているからこそ、時雨の音がひときわ身にしみるという、旅寝のわびしさを表している。
 作者の「読人不知」は、名の伝わらない作者である。

 初句「かくばかり」は、これほどまでに、の意である。本巻の第五百四十一首も同じ「かくばかり」で始まる。
 二句「あはれならじを」の「じ」は打消し推量の助動詞、「を」は逆接の接続助詞で、しみじみとはしないだろうに、の意である。ここで句切れとなる。
 三句「時雨るとも」の「時雨る」は時雨が降る意で、「とも」は逆接の仮定条件である。
 四句「磯の松が根」の「磯」は湖の岸辺をいう。「松が根」は本巻の第五百十首、第五百二十五首にも旅寝の枕として詠まれる。
 結句「枕ならずは」の「ずは」は打消しの仮定条件で、枕でなかったならば、の意である。二句と倒置の関係にある。

しぐる:時雨が降る
いそ:岸辺、水際
まつがね:松の根
作者
よみ人しらず
出典
千載和歌集
前の歌
日を経つつ行くにはるけき道なれど 末を都と思はましかば
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月見ればまづ都こそ恋しけれ 待つらむと思ふ人はなけれど