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貫きとむる秋しなければ白露の
千草に置ける玉もかひなし

歌の意味
露の玉を糸に通してとどめておく秋というものがないので、白露がさまざまな草に置いた玉も、かいのないことだ。
鑑賞
巻第六 秋歌中 335

詞書「露をよめる」
 露の玉を糸に通してとどめておく秋がないので、白露がさまざまな草に置いた美しい玉も、かいのないことだと詠んだ歌である。過ぎ去る秋をとどめられないように、露の玉も残しておけないことを惜しんでいる。
 詞書によれば、露を題として詠んだものである。本巻の第三百八首の「貫き留めぬ玉ぞ散りける」に通じる趣向で、露の玉を貫きとめられないことを、過ぎゆく秋に重ねている。
 作者の藤原清正は堤中納言藤原兼輔の子で、紀伊守などを務めた。三十六歌仙の一人である。

 初句「貫きとむる」は、糸に通してとどめておく、の意である。本巻の第三百八首の四句「貫き留めぬ」と同じ語を用いている。
 二句「秋しなければ」の「し」は強意の副助詞で、秋がないので、の意である。
 三句「白露の」は、白露が、の意である。
 四句「千草に置ける」は、さまざまな草に置いている、の意で、本巻の第三百十首の「千草の色」に通じている。
 結句「玉もかひなし」は、玉もかいがない、の意で、露の玉を残しておけないむなしさを表している。

ぬきとむ:糸に通してとどめる
ちくさ:さまざまな草
かひ:効き目、値うち
作者
藤原清正
出典
後撰和歌集
前の歌
秋の夜は人をしづめてつれづれと かきなす琴の音にぞ泣きぬる
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秋風にいとど更けゆく月影を 立ちな隠しそ天の河霧