- 歌の意味
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秋霧が立つ、その立野の牧の馬を引いて来るときには、あなたのことが心に乗りかかって、恋しく思われることだ。
- 鑑賞
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巻第七 秋歌下 367
詞書「兼輔朝臣、左近少将に侍りける時、武蔵の御馬迎へにまかり立つ日、にはかにさはることありて、代はりに同じ司の少将にて迎へにまかりて、逢坂より随身を返して言ひ送り侍りける」
立野の牧の馬を引いて来るこの時には、あなたのことが心にかかって恋しく思われると詠んだ歌である。本来ともに来るはずだった同僚を思う親しみの情を、馬に寄せて表している。
詞書によれば、藤原兼輔が左近少将であったとき、武蔵の国から献上される馬を出迎えに出立する日に、急な差し支えができたので、作者が同じ近衛府の少将として代わりに迎えに出かけ、逢坂の関から随身を帰して兼輔に詠み送ったものである。藤原兼輔は堤中納言と呼ばれた歌人で、紫式部の曾祖父にあたる。
作者の藤原忠房は平安時代前期の官人で、右京大夫などを務めた。管弦にすぐれ、古今和歌集にも歌が採られている。
初句「秋霧の」は、秋霧が立つ、の意で、次の「たち」を導いている。
二句「たちのの駒を」の「たち」は、霧が「立つ」意と、武蔵の国の牧の名「立野」を掛けた掛詞である。立野の牧の馬を、の意である。
三句「引く時は」は、馬を引いて来るときには、の意である。
四句「心に乗りて」は、心にかかって、の意で、「乗る」は「駒」の縁語となっている。
結句「君ぞ恋しき」は、あなたが恋しい、の意で、係助詞「ぞ」と連体形「恋しき」が係り結びをなしている。
たちの:武蔵の国にあった牧の名「立野」と、霧が「立つ」を掛ける
こまむかへ:諸国の牧から献上される馬を、近衛の官人が逢坂の関まで出迎える行事
ずいじん:貴人の外出に警護として従う近衛の舎人
こころにのる:心にかかる、心を占める
- 作者
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藤原忠房
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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天の川雁ぞと渡る佐保山の 梢はむべも色づきにけり
- 次の歌
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石上ふるのの草も秋はなほ 色ことにこそあらたまりけれ