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人住まず荒れたる宿を来て見れば
今ぞ木の葉は錦織りける

歌の意味
人も住まず荒れてしまった家に来て見ると、今こそ木の葉が錦を織りなしていたことだ。
鑑賞
巻第八 冬歌 458

詞書「住まぬ家にまで来て、紅葉に書きて言ひつかはしける」
 人も住まず荒れてしまった家に来てみると、今こそ木の葉が錦を織りなしていたと詠んだ歌である。人の住まない荒れた家に、紅葉だけが錦のように美しく彩っているさまに、そこに住んでいた人へのなつかしさをこめている。
 詞書によれば、人の住んでいない家にやって来て、紅葉の葉に書きつけて送った歌である。次歌は伊勢の返歌で、二首は贈答の一組となっている。
 作者の「枇杷左大臣」は藤原仲平である。藤原基経の子で、兄に時平、弟に忠平がいる。左大臣に至り、枇杷殿に住んだことから枇杷左大臣と呼ばれた。伊勢と恋愛関係にあったことが知られている。

 初句「人住まず」は、人が住んでいない、の意である。
 二句「荒れたる宿を」は、荒れてしまった家を、の意である。
 三句「来て見れば」は、やって来て見ると、の意である。
 四句「今ぞ木の葉は」の「ぞ」は強めの係助詞で、今こそ木の葉は、の意である。
 結句「錦織りける」は、紅葉を錦の織物に見立てた表現で、四句の「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ係り結びとなっている。

やど:住まい、家
作者
藤原仲平
出典
後撰和歌集
前の歌
ちはやぶる神垣山の榊葉は 時雨に色も変はらざりけり
次の歌
涙さへ時雨にそひてふるさとは 紅葉の色も濃さまさりけり