山彦の声にたてても年は経ぬ
我が物思ひを知らぬ人聞け
- 歌の意味
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山びこのように声に出して叫んでも、こたえのないまま年は過ぎてしまった。私の物思いを知らないあの人よ、聞いてほしい。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌四 797
詞書「女につかはしける」
山びこのように声に出しても年が過ぎてしまった、私の物思いを知らない人よ聞け、と詠んだ歌である。こたえてくれない相手に向かい、年を重ねた恋の苦しさを強い命令の形で訴えている。
詞書によれば、女のもとへ送った歌である。本巻の第八百七十六首も山びこを詠み、こちらは便りを山びこの答えにたとえており、呼びかけとこたえという反転した構図をなしている。
作者の「枇杷左大臣」は藤原仲平である。関白藤原基経の子で、左大臣に至った。枇杷殿に住んだことからこう呼ばれ、伊勢と恋の歌を交わしたことでも知られる。
初句「山彦の」は、山びこのように、の意で、山や谷に声がはね返る現象をたとえとしている。
二句「声にたてても」は、声に出して言っても、の意で、思いを口に出して訴えてきたことを表す。
三句「年は経ぬ」は、年は過ぎてしまった、の意で、「ぬ」は完了の助動詞である。ここで句切れとなる。
四句「我が物思ひを」は、私の恋の思い悩みを、の意である。
結句「知らぬ人聞け」は、知らない人よ聞け、の意で、命令形で強く呼びかけて歌を結んでいる。
やまびこ:山や谷で声がはね返ってくる現象、こだま
ものおもひ:恋の思い悩み
- 作者
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藤原仲平
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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うち返し見まくぞほしき故郷の 大和なでしこ色や変はれる
- 次の歌
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玉藻刈る海人にはあらねどわたつみの 底ひも知らず入る心かな