玉藻刈る海人にはあらねどわたつみの
底ひも知らず入る心かな
- 歌の意味
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美しい藻を刈る海人ではないけれども、海の底の果ても知らずに深く入り込んでいく私の心であることよ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌四 798
詞書「身よりあまれる人を思ひかけてつかはしける」
藻を刈る海人ではないが、海の底の果ても知らずに入っていく心だ、と詠んだ歌である。身分の及ばない人を思う恋を、底知れない海に身を沈める海人の姿に重ね、その深さと危うさを表している。
詞書によれば、自分の身分以上の人に思いをかけて送った歌である。次歌の第七百九十九首は、この歌に返事がなかったので重ねて送った歌で、ともに海の景物で恋を詠んでいる。
作者の紀友則は、紀有友の子で、紀貫之の従兄弟にあたる。古今和歌集の撰者の一人であるが、完成を見ずに没した。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「久方の光のどけき春の日に」の歌が採られている。
初句「玉藻刈る」は、美しい藻を刈る、の意で、「玉」は美称である。
二句「海人にはあらねど」は、海人ではないけれども、の意で、「ど」は逆接を表す。
三句「わたつみの」は、海の、の意である。
四句「底ひも知らず」は、底の果ても知らずに、の意で、恋の深さが計り知れないことを表している。
結句「入る心かな」は、入り込んでいく心であることよ、の意で、海に深く入る意と、思いに深く入り込む意を重ねている。「かな」は詠嘆を表す。
たまも:美しい藻
あま:海に潜って漁をする人、海人
わたつみ:海、海の神
そこひ:底の果て、きわみ
- 作者
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紀友則
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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山彦の声にたてても年は経ぬ 我が物思ひを知らぬ人聞け
- 次の歌
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みるもなくめもなき海の磯に出でて かへるがへるもうらみつるかな