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うち返し君ぞ恋しき大和なる
布留の早稲田の思ひ出でつつ

歌の意味
田を何度も鋤き返すように、繰り返しあなたが恋しい。大和の布留の早稲田のことを思い出しながら。
鑑賞
巻第九 恋歌一 512

詞書「大和に相知りて侍りける人のもとにつかはしける」
 大和の布留の早稲田を思い出しながら、繰り返しあなたが恋しいと詠んだ歌である。田を鋤き返す「うち返し」に繰り返し思う心を重ね、遠く離れた大和の人への恋しさを伝えている。
 詞書によれば、大和で契りを交わした人のもとへ送った歌である。次歌はその返歌で、二首は贈答の一組となっている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「うち返し」は、田を鋤き返す意と、繰り返し、の意を重ねており、四句の「早稲田」の縁語となっている。
 二句「君ぞ恋しき」は、あなたが恋しい、の意で、係助詞「ぞ」と連体形「恋しき」が係り結びをなしている。ここで句切れとなる。
 三句「大和なる」は、大和の国にある、の意である。
 四句「布留の早稲田の」は、大和の石上の布留にある、早く実る稲の田の、の意で、布留は歌枕である。次歌の初句「秋の田の」がこれを受けている。
 結句「思ひ出でつつ」は、思い出しながら、の意で、「つつ」は反復と継続を表す。二句との倒置となっている。

わさだ:早く実る稲を植えた田
ふる:大和の石上のあたりの地名、歌枕
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
夕暮れはまつにもかかる白露の おくる朝や消えは果つらん
次の歌
秋の田のいねてふ事をかけしかば 思ひ出づるがうれしげもなし