秋の田のいねてふ事をかけしかば
思ひ出づるがうれしげもなし
- 歌の意味
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秋の田の「稲」ではないが、「往ね(去れ)」という言葉をかけたのだから、今さら思い出してくれても、うれしくもない。
- 鑑賞
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巻第九 恋歌一 513
詞書「返し」
あなたが「往ね(去れ)」という言葉をかけたのだから、今さら思い出してくれてもうれしくもないと詠んだ歌である。前歌の早稲田を受けて秋の田の稲に掛け、かつて冷たくされたことを持ち出して切り返している。
前歌への返歌である。前歌の「早稲田」を受けて「秋の田のいね」と返し、「思ひ出でつつ」を受けて「思ひ出づる」と答えている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「秋の田の」は、秋の実った田の、の意で、二句の「いね」を導いている。前歌の四句「布留の早稲田の」を受けている。
二句「いねてふ事を」の「いね」は、田の「稲」と、去れ、の意の「往ね」を掛けた掛詞で、「てふ」は、という、の意である。
三句「かけしかば」は、言葉をかけたので、の意で、「しか」は過去の助動詞「き」の已然形である。
四句「思ひ出づるが」は、思い出すことが、の意で、前歌の結句「思ひ出でつつ」を受けている。
結句「うれしげもなし」は、うれしくもない、の意である。
いね:田の「稲」の意と、去れの意の「往ね」を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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うち返し君ぞ恋しき大和なる 布留の早稲田の思ひ出でつつ
- 次の歌
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人恋ふる心ばかりはそれながら 我は我にもあらぬなりけり