見初めずてあらましものを唐衣
たつ名のみして着る夜なきかな
- 歌の意味
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見初めないでいればよかったのに。唐衣を裁つように浮き名ばかりが立って、その衣を着て共に寝る夜もないことよ。
- 鑑賞
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巻第九 恋歌一 539
詞書「題しらず」
あの人を見初めなければよかった、浮き名ばかりが立って共に寝る夜もない、と詠んだ歌である。逢うこともないのに噂だけが立つ恋を後悔し、唐衣に託して嘆いている。
本巻の第五百三十四首と同じく四句に「たつ名のみして」を置き、噂ばかりが立つ恋のむなしさを詠んでいる。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。
初句「見初めずて」は、見初めないで、の意である。
二句「あらましものを」の「まし」は反実仮想の助動詞で、いればよかったのに、の意である。ここで句切れとなる。
三句「唐衣」は、美しい衣、の意で、四句の「たつ」と結句の「着る」を導いている。
四句「たつ名のみして」の「たつ」は、衣を「裁つ」と、浮き名が「立つ」を掛けた掛詞である。本巻の第五百三十四首の四句と同じ句である。
結句「着る夜なきかな」は、衣を着て共に寝る夜もないことよ、の意で、「着る」は唐衣の縁語である。
みそむ:初めて見て恋心をいだく
たつ:衣を「裁つ」意と、浮き名が「立つ」意を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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夢にだに見ることぞなき年を経て 心のどかに寝る夜なければ
- 次の歌
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かれ果つる花の心はつらからで 時過ぎにける身をぞ恨むる