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ともすれば玉にくらべしますかがみ
人の宝と見るぞ悲しき

歌の意味
何かにつけて宝玉にも比べた澄んだ鏡が、今は他人の宝となっているのを見るのは悲しいことだ。
鑑賞
巻第九 恋歌一 556

詞書「題しらず」
 かつては宝玉にも比べて大切にした澄んだ鏡が、今は他人の宝になっているのを見るのは悲しい、と詠んだ歌である。自分が大切にしていた相手が、今はほかの人のものになっていることを、鏡にたとえて嘆いている。
 大切な相手を宝の鏡にたとえ、それが他人の手に渡ったことによって、失った恋の悲しみを表している。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。

 初句「ともすれば」は、何かにつけて、の意である。
 二句「玉にくらべし」は、宝玉に比べた、の意で、それほど大切にしたことをいっている。
 三句「ますかがみ」は、よく澄んだ鏡のことで、大切にしていた相手をたとえている。
 四句「人の宝と」は、他人の宝として、の意である。
 結句「見るぞ悲しき」は、見るのが悲しい、の意で、係助詞「ぞ」と連体形「悲しき」が係り結びをなしている。本巻の第五百六十一首の結句と同じ句である。

ますかがみ:よく澄んだ鏡
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
いかでかく心ひとつをふたしへに 憂くもつらくもなして見すらん
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岩瀬山谷の下水うち忍び 人の見ぬ間は流れてぞ経る